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2009年12月 アーカイブ

2009年12月02日

ベートーベンの目指す第九

 以前yomiっこで盲目のテノール歌手、茶木敏行さんを紹介した。
そのときの茶木さんの夢「健常者と障害者が共に第九を歌う場作り」が、
いよいよ実現に向かって動き出した。
本年11月15日、なら100年会館大ホールでのコンサートが決定したのだ。

 茶木さんは幼少の頃より視覚障害があり盲学校へ。
そこから難関を乗り越え、大阪芸術大学に視覚障害者第一号として合格。
大学院を経てドイツに7年も留学し、帰国後声楽レッスン教室「CAコンセル
ヴァトワール」を開設。
今は10代から80代まで100人の生徒を指導する。

 茶木さんの思いに賛同したピアニストの綿貫洋子さんやNPO法人地域創造
政策研究センターのメンバーが、「NSK混声合唱団(綿貫洋子団長)」を設立。
歌の練習だけでなく、障害者をどのようにサポートすればよいかも学んでいる。
ならばうちの主催事業にと、なら100年会館が申し出てコンサートが決定した。

 茶木さんは言う。「ベートーベンは死ぬ前に第九を書いています。
彼は、権力者や貴族にこびたり屈することなく生きてきて、庶民に受け入れら
れた作曲家です。
その人が最後に書いたこの曲、メロディーが単純であることから、ウイーン市民
に歌ってほしいと思った悟りの曲のように思うのです。
だから誰が歌ってもいい、少々音がはずれていてもいい、みんなで歌うことに
感動がある、それがベートーベンの目指す第九ではないでしょうか」。

 テノール、バリトン、ソプラノ、アルトだけでなく、障害者の方のためにやさしい
第五のパートも用意したり、点字の楽譜を用意したりと準備を進めつつ、
参加者を募集している。
「全員がゼロから何かをやる醍醐味」を茶木さんとともに経験しませんか。
練習日、参加費などは問い合わせを。

yomiっこ 2009年03月号より抜粋】

2009年12月10日

「卒業トイレ掃除」

 少し前、ニュースで横浜市の小学校のトイレ掃除復活がとりあげられていた。
「へえー、トイレ掃除なかったのか」と驚いた。
私の小学生時代は当番で皆が掃除していた。
それも水洗ではない20ぐらい並んだ昔のトイレ掃除は大変だった。

 そのトイレ掃除には、忘れられない小学時代の思い出がある。
当時、私は自分の小学校が大好きだった。
卒業した春休みのある日、友達と二人で小学校に遊びに行った私たちは、
大好きな学校のために何か御礼がしたくて、その20も並んだ汚いトイレを
ぴかぴかに掃除して帰った。
お世話になった先生にも喜んでもらいたかった。

 新学期が始まった全校朝礼の場で、私たちがトイレ掃除をしたことが校長
先生から皆に報告されたと、在校していた妹から聞いた。
もちろん校長先生から手紙もいただいた。喜んでほしいと思ったことを何倍
にも表現してくれた校長先生のお陰で、卒業して30年以上経つ今でも私の
心の中ではその「卒業トイレ掃除」は誇りである。

 トイレ掃除には特別な意味があると思う。
全国に広がっている「掃除に学ぶ会」は、トイレ掃除を通して、謙虚な人に
なれる、気づく人になれる、感動の心をはぐくむ、感謝の心が芽生える、心
を磨く、の5つの利点をあげている。人の嫌がるトイレ掃除だからこそ感動も
気づきも得ることが出来るというものだ。

 ところでインターネットで、奈良学園の2006年生徒会が、公約でトイレ掃除
を掲げ、3日間で全校のトイレ掃除を終えた報告を見た。
一番嫌なトイレ掃除を公約に掲げた生徒会。予想以上につらい掃除だったが
毎日有志が何人も手伝ってくれたこと、最後は感謝と意識改革が出来た話で
締めくくられていた。

 トイレ掃除で学ぶことはたくさんある。
ぜひ子どもたちにこの貴重な経験をしてほしいものだ。 

yomiっこ 2009年02月号より抜粋】

2009年12月18日

お父さん

 この頃、お父さんにも家事や育児に関わってもらおうという
動きが出ている。

 私が関わっている奈良県家庭教育推進協議会でも、
「お父さん出番ですよ、わくわく野外体験」という事業を行った。
 県内の父子約60人が、吐山の野外活動センターでフィール
ドアスレチックや自然工作などをして楽しんだ。
 参加した子どもたちは幼稚園から小学低学年の子どもたち
だったが、その時の彼らのうれしそうな顔! 普段はなかなか
遊んでもらえないお父さんと丸一日遊べるからか、
本当にいい顔をしていた。

 父親はやはり大胆だ。母親なら「危ない!」と思うところを
手も貸さずに横について見ている。子どももお父さんにいい
ところを見せたいのか、高い木の上を、怖くて泣きながらでも
あきらめずに前へ進んでいく姿には感動した。
 後日談を事務局の人に伺うと、今までなつかなかった子ども
たちがお父さんと話をしたり、お父さん同士が仲良くなったりと、
非常にいい効果を生んだようだ。

 11月に行われた、子育てを実践しているお父さんたちの
トークも興味深かった。初めて自分がやってみて妻の苦労が
わかったとか、ほめてもらえないつらさが理解できた、やろう
にもやり方がわからない人もいる、また父親の仲間がいれば
楽しく出来るといった経験談を語っておられた。

 一方で、青少年白書によると、子育て世代の労働時間は
増えており、関わりたくても関われないお父さんも多いだろう。
でも先日の野外アスレチックのように、たった一日で、父親の
威厳を取り戻すことだってある。夫婦円満のためにも、
今から積極的に子育てに関わってみては。

 きっと夕食の品数が一品増えますよ。

yomiっこ 2009年01月号より抜粋】

2009年12月27日

インターネットとうまいもん

 休日に夫婦で食事に出かけた店で、
偶然隣にすわったカップルが島根から旅行で奈良に来ていることを知った。
常連客の多いこの店をどうやって知ったのかと尋ねると
「ネットで見ました」と差し出したのは、
なんと弊社のウェブサイト「奈良っこ」のページ。
この店のほかにも数店プリントアウトして持っていて、翌日、他店に行くそうだ。

 聞くと、奈良に2泊するとのこと。
インターネットというのは本と違って、どこの地域の誰が見てくれているか
見当がつかない。
毎日のアクセスカウント数によって
今日は何人が見てくれたんだなあとわかるのだが、
何か紙媒体よりも手ごたえを感じにくい面がある。
それが島根の人がアクセスして奈良に2泊もしてくれると知り、
遠くの人を瞬時につなぐインターネットの良さを改めて実感した。

さらにそのカップル、
店が本当に美味しくて来てよかったと大満足していただいた。
この店の記事を書いたのは実は私であり、二重の喜びだった。

 こうした仕事をしていると、
本当に美味しい店って、何だろうとよく思う。
それを決定づけるのは決して味だけではない。
もちろん店の内装や雰囲気もあるだろうが、
いくらいい食材を使っていい料理を出して内装がよくても、
何か物足りなかったりする。
それはやはりサービス、つまりおもてなしにつきるだろう。

親しみのある店員さんや常連さんとの会話が弾むことで、
美味しいものがより美味しく感じたりすることもある。
そういった居心地のいい空間が出来て初めて
「美味しい」と言えるのではないだろうか。

味だけでなく、そんなおもてなしもしっかり
yomiっこの紙面やウェブサイトで伝えていかなくちゃ。
「奈良にうまいもんあり」と言われるために。

yomiっこ 2008年12月号より抜粋】