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2009年11月 アーカイブ

2009年11月02日

八尾徳洲会総合病院

知人の紹介で、オープン2日前の新病院を見学した。
八尾徳洲会総合病院。

大阪中河内地域の救急医療の受け皿として昭和53年に開設以来、
20年以上地域医療に貢献する総合病院が、新たに建て直され、移転したのだ。
驚いたのは、医師、看護士、技術士ほか現場医療スタッフが図面を書き、
配置や動線を決めたということだ。


最も重視されているのは動線。

救急関係は2階に集中、救急車到着の扉を開ければすぐ広い救命救急室、
たった3mで手術室に。周りに心臓や動脈検査処置室も配置。
心臓や脳血管関係などの数秒を争う患者にも即座に対応出来る。
上下導線も考えられ、すぐ上は医局。
医師が即座に降りられる体制づくりも出来ている。
病棟も工夫されており、病棟へ入る受付を一か所にまとめて管理しながら、
ナースステーションからすべての病室に最短で駆けつけられる構造になっている。

機能重視だけではない。
患者がいかに快適に過ごせるかという工夫が多々見られる。
たとえば複数人の病室も、ベッドを少しずつずらした独自の配置で、
個室の雰囲気と大部屋のよさを取り入れた明るい病室を可能にした。
ほか、ちょっとした棚の工夫など、
患者にとって居心地のいい空間が作られている。


なんと新病院への取り掛かりは10年前。
数人が交替で全国の有名病院を視察して回り、5年前から本格的に図面作成へ。
各部署ごとに議論がなされ、具体的にしていったようだ。

今回案内いただいたのも、呼吸器外科の先生。
病院運営というと事務方の仕事ととられがちだが、
どの部署を拝見してもそれぞれの先生が自信を持って
「うちはここが工夫されているところ」と
説明しておられたのが非常に印象的だった。

すばらしい病院を自ら作ったスタッフの皆さんの熱意を目の当たりにし、
地域で高い評価を受けていることに納得した一日だった。

yomiっこ 2009年09月号より抜粋】

2009年11月10日

新型インフルエンザ と 政治

 世界を震撼させている新型インフルエンザ。
ある朝、神戸市が「安全宣言」を発表、それを受けて、
テレビのワイドショーで「神戸市が安全宣言しているのに
国は何をしているのか」と非難していた。
もし安全宣言が出た後何かがあれば、なぜ宣言したんだと
また非難するんだろうなと、しらけた思いで見た。

 国を擁護するわけではないが今回のことは日本でも初めて
のことだ。見えない先を予測しながらベストな方法を探すし
かない。誰が悪いなどの低レベルな討論ではなくそれぞれが
今回の反省をどう次に生かすかの前向きな議論がほしかった。

 気になることはまだある。
政治家の世襲制について。
最近それを認めないルールづくりに躍起になっている。
別に政党のことをどうこう言っているのではなくて、ルール
づくりの考え方そのものがおかしいと思う。

 私の知人は、父親が政治家で、父の苦労をつぶさに見て
感じてきたので、「政治家だけには絶対ならない」と
言っていたが、年齢も成熟し、やっと父親がそうまでして
続ける思いがわかったと言い、彼も政治家になった。
二代目は地盤があると言われるが、「親は応援したけど
息子は違う」と、はっきりノーを出すところも多いと聞く。

 だいたい親の姿を見て息子がその職業を継ぎたいと思う
のは、政治家も同じ、何の職業であれ、すばらしいことで
はないだろうか。問題は、個々人の能力や人柄ではないか。
親子そろってすばらしい政治家もいれば、だめ親でも息子が
しっかりしている人もいる。
選ぶのは我々なのだ。嫌なら選ばなければいい。
そんなことをルール化すること自体、バカバカしいと思う。
 
そして、これからの時代は、単に政治家に託すのではなく、
政治家も市民、県民、国民もともに考え行動し、問題解決
していく時代になっていくと思う。
もっと賢い、おおらかな国民でありたいものだ。

yomiっこ 2009年07月号より抜粋】

2009年11月17日

浜松まつり

「浜松まつりの凧揚げはすごいよ〜。まあ自分で見た方がいい」。
1月、曽爾高原の凧揚げ大会で出会った浜松凧(たこ)の会の
内山富久会長に言われ、どんなにすごいのか見たくなった。

 祭りが5月3日〜5日ということで、主人を説得して浜松へ。
恥ずかしながら知らなかった。
400年もの歴史を誇る、こんなに大きな祭りがあったとは。
見どころは二つ。
浜で行う凧揚げ合戦と、市内中心部を練る御殿屋台引き回し。
浜松市民あげての祭りだ。

 会場の中田島砂丘へ行ってびっくり。
高齢者から幼児まで、各町の法被を着た老若男女が陣屋を張り、
ごった返していた。
町ごとに凧や御殿屋台を出すのが特徴。
今年は過去最多の174町が凧揚げ参加で、あちこちで町の大凧を
揚げている。小さくて畳2帖、大きいものなら8帖ほどあろうか。
何人もの男衆が号令と怒号を飛ばしながら天に揚げる。
女性や子どもたち、残った町民はラッパや太鼓を鳴らして凧が揚がる
まで声援を送る。
やっと高々と揚がると組長をかついで全員が万歳三唱。

 次にけんか凧といって、他町の凧の糸と糸を絡ませ、切り合いを行う。
見事勝った町は、組長を肩車に会場内を練り歩く。
小雨にも関わらず、会場はにぎやかな音と熱気にあふれていた。

 84か町の豪華絢爛な御殿屋台は夜だ。
3日間ライトアップされ、屋台を引き回した後、提灯を持った全員が
練りを作っていく。

 元気な高齢者が多く、皆実にいい顔をしている。凧揚げを通して
町の伝統を皆で伝え守っていく。本当にうらやましい光景だった。
出会う人が皆気さくでおもてなしの心にあふれているのも、
祭りという経験を通して学ぶからだと思った。内山会長は昨年から
11月第2土・日曜日に、浜松ガーデンパークで凧の全国大会を開催
している。
このときは浜松以外の人も凧を揚げられる。

行ってみませんか、浜松へ。

yomiっこ 2009年06月号より抜粋】

2009年11月20日

おくりびと

 日本、米国アカデミー賞など数々の賞を総なめにした映画『おくりびと』。
残念ながら映画はまだ見ていないが、TVのCMを見て、もう30年も前に
亡くなった祖父のことを思い出した。
家で亡くなったので、家族皆が身体を拭いたり綿を詰めたりして、旅立ち
の支度をした記憶がある。

 その頃は家で看取ることは普通だったが、今は家で死ねない社会になった。
大半の人が病院で息を引き取り、たまに家で亡くなると、警察が来て取り
調べられるという。万が一事件であったらということらしいが、悲しみの
中にある遺族としてはいたたまれないだろう。

 知人が先日、スリランカの話をしてくれた。
「スリランカでは、末期を迎える時は、家の一番いい部屋に寝かせて、
当人のわがままをいろいろ聞いて、当人が会いたい人を皆呼びます。
誰もが遠方から『功徳だ』と言って会いにきて、ずっと見守ります。
さらに、死んだらこうするんだとか、ああ言うんだとか、
死後の世界についてまるで知っているかのように、ノウハウをその人
に伝え、わいわい楽しんで送ります。
当人も幸せそうに死んでいくのです」と。
さらに
「日本も昔はお年寄りみんな笑ってたのに、今、笑っているお年寄り
がいない。明日が楽しみと言うお年寄りを見たことがない」と続けた。

 本当にそうだ。ずっと昔の日本は、家庭の中で、近所で、お年寄り
を大切にする社会だった。お年寄りは尊敬すべき存在だった。
そんな社会に戻さないと大人を尊敬する子ども、未来に目的を持って
生きる子どもは育たないと思う。

 皆同じように老いていき、自分も送られる側になる。
笑っていい死に方が出来るような社会に戻すのは、今からでも遅くない。
まずはちょっと見方を変えること。
日頃かけない言葉をかけてみること。
目の前の一歩から始めてみたい。

yomiっこ 2009年05月号より抜粋】

2009年11月25日

地域フォーラム

 薬師寺の東塔と西塔、バックに若草山という絶好のカメラスポット
である、奈良市六条町の大池。
この大池を観光スポットに出来ないものか。
そのための水質浄化にヤクルトの容器の底を切って沈めてはどうか。
そんなユニークな提案が出されたのは、
奈良県立西の京高校「地域創生コース」2年生による
「地域フォーラム」の一場面だ。

 同コースは、平成15年に教育特区の認定を受けて誕生、
毎年約40人の生徒たちが入ってくる。私も地域づくりの
講演をしに、何度か行かせていただいたことがあるが、
将来は地域に関わる仕事や地域づくりをしたいと
中学生の時点で考えてこのコースを選んだ生徒たちは
すごいなあといつも感心している。
そしてこのフォーラムは、2年生が一年かけて地域の
課題研究をし、提言を発表するものだ。
 
 フォーラムには、生徒の父兄や地域住民まで聴講に来る。
今年の2年生は7グループに分かれ、先ほどの大池の活用や、
高校がある奈良市六条地区の子どもの安全を考えた取り組み、
地震による二次災害の防災、伝統工芸である赤膚焼をどう
守り続ければいいかといった発表がなされた。

 また、現状を把握するため、住民にアンケートや聞き取り
調査を実施しているが、これで生徒や住民が顔見知りになり、
そこから地域のコミュニケーションが生まれていくのだろう。

 そして、発表内容と等しく感動したのが、生徒のおもてなし
だった。フォーラムはすべて生徒によって運営される。
会う生徒皆が「こんにちは」と笑顔で元気に挨拶してくれ、
練習したらしいお茶を丁寧に出してくれた。

 地域のことを学ぶだけでなく、きちんと挨拶し、スリッパを
出しての出迎え、おいしいお茶を入れる…。
そんな最も大切なおもてなしの基本が根本にあれば、将来の
地域づくりは「任せて安心」。がんばれ!

yomiっこ 2009年04月号より抜粋】